私の友人の知り合い(Aさんとする)が他界された話から。
「癌が心配」でPET*1検査を受け「癌はありませんよ」と言われ安心していたのに、半年も経たないうちに膵癌で亡くなられたそうです。—合掌—
*1 PET(ポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影):放射線でラベルしたブドウ糖を用い増殖中の癌細胞をみつける検査 PETとは放射線を身体に対し内からと外からのダブルで用いた画像診断装置で”1mmの癌も見つける”が宣伝文句らしい。
当院のようなちっぽけな診療所にも”買いませんか?” とパンフレットが送られてきた。
購入費用12〜14億円!!!
設置する部屋づくりに1億から2億円かかるしろものだ。最新の診断装置と言われているが、厚労省はすでに癌の診断がついている13疾患の場合とてんかんと虚血性心疾患のみ保険適応を認め一検査86,250円という診療報酬になっている(3割負担ならば窓口支払いは25,875円となる)。
従って検診では自費払い(相場は一検査15〜20万円位)となる。
当院はレントゲン検査機器すら置いていない。
患者さんの身体に悪影響を及ぼす可能性のある検査は一切行わないポリシーである。だから買うわけない。
さてPETについて考えてみよう。
例えば1mmのものを探すには1mmづつの断面を調べても見つからない可能性がある。だから大体0.5mmづつの切断面を画像として取り込む必要がある。
となると一検査でどれだけの放射線を浴びせるのだろう?
Aさんが検査の時点で本当に癌がなかったならば数カ月で生命を落としてしまう事は考えられないことだ。
通常、癌はその組織によっても異なるが1個の癌幹細胞が増殖して生命をおびやかすようになるまで、数年から20年位の時間がかかると言われている。だから腑に落ちない。
たとえ検査の時点で1mm未満の大きさだったとしても、4,5ヵ月で癌を原因として亡くなる事は信じられない。
そこで思うに大量の放射線を浴びた為に免疫系に不均衡が生じ癌化が促進され、しかも膵癌は小さくても致命的になることが多いから起こってしまった事例ではないかと憶測するのである。
しかし1mmの癌を見つけたら医者達はどう対応するのだろう?
消化器系の癌に抗癌剤は殆ど効果がない。外科的に手術をするはずもない。1mmだし切迫した状態でもないし、消えるかもしれないので様子をみることになるだろう。
例えば内視鏡で小さなポリープを取るような処置をしようとしても胃や大腸で1mmを見つけるのは容易ではない。 空気を入れてふくらませても、ヒダの影で平坦な粘膜下だとたぶん見つけられない。結局数カ月に1回のPET検査が予定され、患者さんの
「癌がある!怖い、どうしよう!もうじき死んでしまうのか?」
という恐怖心が残るのである。
臨床症状があれば無作為でなく合目的的な必要検査をして、それなりの治療が進められるが「1mmの癌」に対して現代西洋医学は治療方針を持っていない。
なのにPETを購入したがる医者(病院)がいる。診断と治療というのは同じ土俵になければならない。診断のみ先行しては混乱と落胆を引き起こすだけである。
検査機器メーカーは治療を考慮していないのだろうか?
診断技術が上がればそのうち治療方針に変化は生ずるものの、それまでの間多くの患者さんに混乱を与えることになる。
また、私が循環器研修医だった頃、心臓カテーテル検査のやり方を初めて先輩医師から教わった時のこと。
鼡径部から心臓まで血管の中に細いチューブを送るのだが、うまくガイドワイヤーを進められず出し入れしていると
「それ、10万円だからね…」
つまりワイヤーが変形したり断線すると、また1セット入りの袋を開けなければならないというプレッシャーだった。その頃私の給料は手取りで20数万円。
「弁償するんでしょうか?」
「いや、いや。そんなことないけど病院の持ち出しになる」
冷や汗ものだった場面と、すごい緊張感を今でも思い出す。
そもそも医療現場では高額の医材が多すぎる。
最近は治療の為の検査ではなく、ただ経過をみる為だったり、健診で通り一辺の表面的検査だけで人々に安心を与えすぎたり、基礎研究用の検査機器が臨床現場で誤用(例えば血液の流れをみる装置など)されたりと、日本では本当に検査漬けの医療が横行している。
日本人は何でもすぐ欧米先進諸国と比較するが、ちなみにCTという検査機器を日本はアメリカの9倍も保有している。
何故?
……どこまで言って良いものやら?……
みなさんにも考えて頂きましょう。
