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果糖のデメリット
果物のメリットを挙げましたが、今回は果物にも含まれる果糖のデメリットを説明します。
果糖とは
果糖は糖質の一種で、フルクトースとも呼ばれます。その名の通り果物に多く含まれ、ハチミツにも含まれています。糖質の最小単位である単糖類の一つで、同じ単糖類にブドウ糖(グルコース)があります。ちなみに砂糖はショ糖(スクロース)と言い、果糖とブドウ糖が1:1で結合した二糖類です。
果糖は糖質の中で最も甘味が強く、冷やすと甘味を感じやすいという特徴があります。血糖値を上げない糖と言われ(健診等で調べる血糖値は、ブドウ糖の血中濃度です)、名前からもヘルシーなイメージがあるかもしれませんが、近年果糖の健康への影響(デメリット)が数多く報告されています。
果糖の摂りすぎで肥満?高尿酸血症のリスクも
ブドウ糖は小腸から吸収されて血液に移行し、膵臓から分泌されるインスリンの作用で体内の様々な臓器の細胞に取り込まれてエネルギー源となります。
一方果糖は小腸から吸収された後に肝臓へ運ばれ、ブドウ糖に変換される他、過剰に摂取した場合には肝臓で中性脂肪に合成され、高中性脂肪血症となり肥満を来すおそれがあります1。肝臓での果糖の代謝の過程で尿酸も合成されるので、痛風の元にもなる高尿酸血症のおそれがあります。
果糖と肥満に関連して、こんな本を見つけました。
著者はアメリカの医科大学院小児科教授で、果糖の健康被害(アルコールに匹敵する毒性がある)や、人はなぜ太るのか等について考察しています。
お酒を飲まないのに、果糖の過剰摂取で脂肪肝!!
飲酒と関係なく脂肪肝を生じることがあり、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といいます。NAFLDには、軽症の単純性脂肪肝(NAFL)と重症の脂肪性肝炎(NASH)が含まれます。NASHの場合は肝硬変や肝癌に進展しうるので問題となります。
このNAFLDの発症に、果糖及び腸内環境の異常が影響しているという報告があります2,3。
具体的には、過剰な果糖の摂取により小腸のバリア機能がそこなわれ、腸内細菌由来の毒素が肝臓に達し肝炎に関与するという機序が述べられています。肝臓の炎症が続くと肝硬変、肝癌へと進展します。
たかが脂肪肝と侮れないのです。
果糖の過剰摂取による糖化と老化
老化に関して、活性酸素による「酸化」の他、近年「糖化」が注目されています。酸化が「体のサビ」と言われるのに対して、糖化は「体のコゲ」とも言われます。
糖化とは糖と蛋白質等が結合する現象のことで、メイラード反応ともいいます。これによって形成される終末糖化産物(AGE)が様々な疾患や老化と関連すると指摘されています。特に体内のコラーゲン繊維の糖化が肌のシワ等の老化につながると言われています4。 果糖もブドウ糖も糖化を生じますが、果糖はブドウ糖の8~10倍AGEを生成すると推定されています4。
異性化糖とは?
ここまで果糖の健康被害を示してきましたが、砂糖(果糖とブドウ糖が結合している)、そして近年では異性化糖による影響が大きいと言われています5。
異性化糖とは果糖とブドウ糖が混合した液状の糖で、とうもろこしデンプン(コーンスターチ)から工業的に製造したものです。果糖の割合が多いものを果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖の割合が多いものをブドウ糖果糖液糖と呼びます。砂糖より安価で、液状なので加工しやすく、多くの加工食品や飲料に用いられています。
例えば、清涼飲料水、アルコール飲料、冷菓(アイス、ゼリー等)、調味料(めんつゆ、ソース、ケチャップ、ドレッシング、調味酢等)、フルーツの缶詰、フルーツジュース等身近なものに異性化糖が入っています。
様々なデメリットが指摘されている果糖の摂取を減らす近道は、砂糖や異性化糖が含まれている食品・飲料水を極力減らすことです。果物はメリットもあり、食べ過ぎない程度に。
ちなみに 丸山所長の2021年8月のメッセージ に所長の飲食について書かれていますが、“果物や甘味は年に数回、頂き物で味見をする程度で殆んど摂りません”とあります。小食でしかも果糖を含む食品を控えている食習慣が、所長の若々しさの秘訣なのかもしれません。
実は、もう1つ丸山所長が果物を摂らない理由があります。それは、果糖がミトコンドリアに及ぼす影響に関連しています。次回の私の担当のブログ記事で紹介します。
<参考>
- e-ヘルスネット 果物(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-01-003.html)
- 杉本和史 他:アルコール性肝障害と非アルコール性脂肪性肝疾患-その共通点と相違点から見えてくる病態-.日消誌 2015;112:1641-1650.
- 鍛冶孝祐 他:NASHにおける腸内細菌叢と腸内代謝産物の役割.日内会誌 2020;109:27-33.
- 高尾明日香 他:果糖の過剰摂取は老化につながる?.九州保健福祉大学研究紀要 2021;22:83-87.
- 永井義夫 他:フルクトースの健康影響.医と食 2010;2(6):303-306
宮下
2024年11月22日