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新型コロナと漢方~感染後・ワクチン後の後遺症~

当診療所では新型コロナウイルス感染後の後遺症およびワクチン接種後の後遺症に対する漢方治療を行っています。

新型コロナウイルス感染後、急性期を過ぎても症状が残ったり途中から新たな症状が持続している例が世界中から報告されており、日本でも厚生労働省から「罹患後症状のマネジメント」として対応がまとめられています2。また東京都は2024年8月13日「新型コロナ後遺症の専用ポータルサイト」を開設し、後遺症状の解説等を掲載しています。

症状は倦怠感や集中力低下いわゆるブレイン・フォグ、睡眠障害、頭痛、息切れや咳、筋肉痛・関節痛や筋力低下、嗅覚・味覚障害の他、持病の悪化など多岐にわたります。

前述の厚労省のマニュアルにある対応を要約すると「個々の症状について、他の疾患の影響の有無を検査し、対症療法を行う」こととなります。ただし、同マニュアル中に提示された症例には漢方薬を使用している例もあり、実際の治療の中で漢方薬が試されていることが伺えます。

一方、ワクチン接種後の後遺症については極端に情報が少なくなります。

実際に、ワクチン接種後に似たような後遺症状を訴える方を診療する機会がありますし、厚労省の調査でも因果関係は認めないもののワクチン後に遷延する症状を有する報告があるのは事実です3。対応は感染後の後遺症に準じて行います。

後遺症の漢方薬による治療は、コロナ急性期同様に体質や症状を勘案して選択します。倦怠感については、まず補中益気湯を始めとする参耆剤が考慮されます。さらに、原因に対して漢方が有効である可能性があります。

感染後の後遺症が引き起こされるメカニズムは、3つの主要な説があります

  1. 新型コロナウイルス、またはおそらくその構成要素(タンパク質SとN)が組織内に持続するウイルス関連メカニズム。
  2. 免疫炎症性機序。自己免疫などを引き起こす。
  3. 血管内皮の炎症と血栓症。

 

上記のうち、1つ目のウイルス持続感染が疑われる場合、および2つ目の炎症所見のある場合に、当診療所では柴胡桂枝湯などの柴胡剤を考慮し、3つ目はいわゆる微小循環障害にあたり、桂枝茯苓丸等を用います。これらは新型コロナ急性期の治療と同様です。

また、東北大のグループは易疲労感を有する感染後後遺症患者で、炎症所見のある場合に柴胡桂枝湯が有効であったと報告しています4

このように漢方薬は新型コロナウイルス感染後の後遺症およびワクチン接種後の後遺症に対して、対症療法以上の効果が期待でき、当診療所のみならず、患者さんにもっと用いられることを望みます。

参考文献

  1. Greenhalgh, T., Sivan, M., Perlowski, A., & Nikolich, J. Ž. (2024). Long COVID: a clinical update. The Lancet.
  2. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント.(2023).厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001159305.pdf
  3. 新型コロナワクチン接種後の遷延する症状に関する実態調査について(第三報).(2024).第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和5年度第15回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001198123.pdf
  4. 小野理恵, 高山真, 齊藤奈津美, 有田龍太郎, 菊地章子, 石沢興太, ... & 石井正. (2024). 易疲労感を有する COVID-19 罹患後患者に柴胡桂枝湯を使用した症例の集積報告. 日本プライマリ・ケア連合学会誌, 47(2), 49-55.

大澤

2024年8月16日

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