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新型コロナと漢方~急性期の治療~
2024年7月に入り、新型コロナウイルス感染者数が増えています1。
2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行後も、感染者数は周期的に増減を繰り返しており、2023年8月、2024年2月にそれぞれ感染の「波」のピークがありました。今回は5類移行後3回目の波と考えられます。
当診療所でも新型コロナ感染症(疑いも含む)の患者様の治療に対応しています。治療は他の疾患同様、漢方薬、カラー治療を中心に行っています。漢方薬は体質、症状を勘案して選択しますが、新型コロナ感染症に対する有効性がデータで示されている処方もあります。
東北大学の高山氏らは葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏のエキス剤を併用して投与した際、呼吸不全への増悪抑制の可能性を示しています2, 3。
この2つの処方の組み合わせは、スペイン風邪(日本での流行は1918年~1920年)の際、木村博昭氏が処方した柴葛解肌湯(柴胡、葛根、甘草、黄ごん、芍薬、麻黄、桂皮、半夏、石膏、生姜)を参考に選ばれました4。この処方は江戸末期から明治時代の漢方家である浅田宗伯が創作したもので5、弟子の木村氏はスペイン風邪の患者に対して
”初期において高熱を発したものには柴葛解肌湯や大青竜湯にて発汗解熱させ…”
という使い方をしていたとのことです6。
柴葛解肌湯は医療用エキス剤にはありませんが、当診療所では煎じ薬で処方可能です。発熱がおさまった後もウイルスの影響が残っている(理学所見の他、カラー治療の所見も参考)場合、倦怠感、咳、頭痛、咽頭痛など症状に応じて柴胡桂枝湯や柴朴湯、柴陥湯、柴苓湯などの柴胡剤を考慮し、味覚・嗅覚障害などで微小循環障害が疑われる場合は桂枝茯苓丸等を併用するなど加減をします。
また、コロナ感染後の遷延する症状やワクチン接種後の体調不良に対しての漢方治療を行っていますので、次回これについて述べたいと思います。
参考文献
- 厚生労働省令和6年8月2日発表→新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について
https://www.mhlw.go.jp/content/001282915.pdf - Shin Takayama, et al(2023).Conventional and Kampo Medicine Treatment for Mild-to-moderate COVID-19:
A Multicenter, Retrospective, Observational Study by the Integrative Management in Japan for
Epidemic Disease (IMJEDI Study-observation). Internal Medicine, 62,187-199.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/62/2/62_0027-22/_pdf/-char/ja -
Takayama S, et al(2022).Multicenter, randomized controlled trial of traditional Japanese medicine,
kakkonto with shosaikotokakikyosekko, for mild and moderate coronavirus disease patients. Front.
Pharmacol. 13:1008946.
https://www.frontiersin.org/journals/pharmacology/articles/10.3389/fphar.2022.1008946/full -
高山 真 ら, (2022).新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方薬治療の臨床エビデンス構築―日本東洋医学会の
COVID-19に対する取り組みと学会主導臨床研究について―.日東医誌,73,117-125.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/73/2/73_117/_pdf/-char/ja - 浅田宗伯方函・口訣・附症候別索引.燎原書店.
-
入江 康仁 中永士師明(2020).ウイルス感染症のパンデミックに対して漢方薬の果たす役割─スペインかぜから学ぶ─.日東医誌,71,272-283.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/71/3/71_272/_pdf/-char/ja
大澤
2024年8月5日