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漢方処方加減の実際:関節痛の漢方
漢方の加減とは?
当診療所では漢方煎じ薬の生薬配合を患者様の体質・症状に合わせて変えています。→漢方薬
標準的な処方の生薬量を変えたり、配合されている生薬を除いたり、他の生薬を加えたりすることを漢方の用語で「加減する」といいます。
関節痛に対する漢方処方を例に、「加減」がなぜ必要か、そして具体的なやり方を説明します。
関節痛の原因と漢方の考え方
関節痛の原因は多岐にわたりますが、当診療所では
- 変形性関節症
- 関節リウマチ
- 痛風
- 労働やスポーツなどによる使いすぎ症候群
- パルボウイルスなどによるウイルス性関節炎
等の治療経験があります。
原因がいずれの場合も、漢方を選ぶ際には
- 患者様の体質(寒熱、燥湿など)→未病健診:証について
- 患部の炎症の程度(痛み、熱感、腫れ、発赤の程度)
がポイントとなります。
関節痛に使われる漢方
代表的な処方を以下に挙げます。
越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)
患部の腫れが強く熱をもっている場合に候補となります。
含まれる生薬のうち麻黄(まおう)は抗炎症作用をもち、石膏(せっこう)は冷やす作用があります。
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
身体が冷えると痛みが増す場合に候補となります。
含まれる生薬のうち附子(ぶし)は温める作用と鎮痛作用があります。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
もともとむくみ易い体質で、患部の熱感は強くないが腫れがある場合に用いられます。
加減の実際
麻黄や附子は効果のはっきりした生薬ですが、患者様の体質によっては血圧を上げたり動悸を起こしたりする場合があるので、特に分量に注意を払っており、1日分を0.1g単位で調整することもあります。
元々冷え症の患者様に対して、身体を冷やす作用の強い越婢加朮湯は体質に合わないと考えられますが、患部の炎症が強い際は処方が必要な場合があります。石膏の量を減らしたり、附子を加える(越婢加朮附湯:えっぴかじゅつぶとう)加減をして調整します。
また、桂枝加朮附湯に茯苓(ぶくりょう)を加えてむくみを除く作用を強める(桂枝加苓朮附湯:けいしかりょうじゅつぶとう)加減をする場合もあります。
体質と患部の状態に合わせた処方が必要
漢方生薬の加減を関節痛の漢方を例に説明しました。
生薬の加減によって漢方の効果をより引き出せる煎じ薬のメリットをご理解頂ければ幸いです。
大澤
2024年5月7日