丸山リハビリテーション診療所 新潟漢方研究所

以前の「日本人の食と病いについて」はこちら

日本人の食と病いについて〜放射能編〜

今回、このコーナーでは初めにグラフを提示します。

 2011年3月11日の東日本大震災に伴い、東京電力福島第一原発事故が発生し、大量の放射性物質が広範囲に拡散し、放射性物質の人体への外部・内部被曝が問題となっています。
 当診療所では2011年3月下旬から放射能に関連するカラー4種類を用意し、診療に用いています。上記のグラフは、2011年3月下旬から2012年4月上旬までの当診療所に於ける、放射能関連カラーの反応出現率を示したものです。使用開始後2ヵ月間はカラーの反応者は少なかったのですが、5月下旬以降台風や集中豪雨の発生に同期して反応者が増加しました。恐らく地表の放射性物質が風や雨によって拡散し、大気・水質・土壌汚染に影響したためと思われます。また東北・関東から受診される患者様や、東北・関東へ旅行した後に受診された患者様にカラーが反応することが多く、大気や飲食を介した外部・内部被曝が考えられました。
 しかし台風シーズンが終わってもカラーの反応率は約10〜20%で推移し、居住地や旅行に関わらずカラーの反応が見られ、反応する部位が消化管に多いことから、飲食を介した内部被曝が最も影響していると思われます。放射性物質を取り込んだことによると思われる症状として具体例を挙げますと、関東の幼児の鼻出血、毎日シラスを摂取していた方の下血、コウナゴの佃煮を毎日摂取していた方の便通不良、東京で外食後の嘔吐・下痢、東北の山菜の天婦羅を摂取した後の下痢などがあります。
 今後も継続して、放射能関連カラーの反応者と症状を調査していきます。

 原発事故後、食品の放射性物質に関して厚労省が暫定基準値を設定し、2012年4月からは新基準値となりました。下表は食品の放射性セシウムの基準値です。

食品群 日本の
暫定基準値
日本の
新基準値
ウクライナの基準値
(1997年改訂)
野菜類 500 100 40
穀類 500 100 パン  20
肉・卵・魚・その他 500 100 肉   200
卵 6(1個)
魚   150
飲料水 200 10 2
牛乳 200 50 100
乳製品 200 100 100
乳児用食品 10 粉ミルク500

※単位:ベクレル/kg

 表には比較として、1986年にチェルノブイリ原発事故が起こったウクライナの放射性セシウムの基準値も提示しました。ウクライナの基準は、日常生活で多く摂取するものについては厳しい基準を設定し、摂取する量が少ないものについては緩くなっています。ウクライナと比べると、日本人の主食である米や、野菜、飲料水については基準が高いと言えます。

 基準値を下げ、原則的に4月からは新基準値を超える放射性物質が検出された食品は、出荷停止などの規制を受けます。とは言え、放射性物質は本来わずかでも摂取してはならないもので、基準値未満の食品や、検査してないが放射性物質を含んだ食品が流通し、内部被曝に影響している危険性があるのです。更に、セシウムよりも危険なプルトニウム、ストロンチウムについては検査されておらず、知らない内に摂取している危険性もあります。放射性ストロンチウムに関して、水産庁は2011年6月から水産物のストロンチウムの測定結果を公表していますが、サンプル数は10数例で少数です。実際、福島県沖の魚からストロンチウム90が検出されています。

 食品の放射性セシウムの新基準値が適用されて1ヵ月半が経過しましたが、厚労省から発表された検査結果の内、基準値を超過した食品を以下にまとめます。

食品の放射性物質(セシウム)検査の結果(2012年4月1日〜5月16日)
産地 食品群 検査
件数
基準値
超過件数
超過品目
※数字は件数
福島県 農産物 1,444 80 コシアブラ25、タケノコ13、タラノメ12
コゴミ11、フキノトウ8、ワラビ6、ゼンマイ3
花ワサビ1、ホウレンソウ1
水産物 707 175 ヒラメ20、マコガレイ16、アイナメ18、スズキ11
シロメバル13、コモンカスベ14、イシガレイ7
イワナ8、ババガレイ6、ウグイ4、エゾイソアイナメ6
マダラ5、メイタガレイ4、ヤマメ5、ケムシカジカ2
ヒメマス3、ムシガレイ3、ムラソイ2、アカシタビラメ2
ウスメバル3、キタムラサキウニ2、キツネメバル1
ギンブナ2、クロウシノシタ2、クロソイ1、コイ2
サクラマス1、サブロウ2、スケトウダラ1、ニベ2
ヌマガレイ1、ホシガレイ1、マアナゴ2
マガレイ1、マゴチ2
その他 183 1 モツゴの唐揚げ1
宮城県 農産物 184 40 原木シイタケ22、コシアブラ7、コゴミ4
ゼンマイ3、タケノコ2、タラノメ1
水産物 363 14 スズキ4、イワナ3、ウグイ2、ヒガンフグ2
ヤマメ1、ヒラメ1、マダラ1
野生
鳥獣肉
5 3 野生イノシシ肉3
その他 22 4 ヤーコン茶(粉末)4
茨城県 農産物 263 25 タケノコ14、原木シイタケ6、コゴミ2
コシアブラ3、タラノメ1
水産物 486 27 アメリカナマズ8、ギンブナ4、スズキ4、ニベ3
ウナギ3、イシガレイ1、イワナ1、シロメバル1
ヒラメ1、ヤマメ1
その他 19 9 乾シイタケ9
栃木県 農産物 561 76 原木シイタケ41、コシアブラ14、タケノコ5
コゴミ4、サンショウ4、タラノメ4、ゼンマイ2
ワラビ2
水産物 165 19 ウグイ9、カワマス7、ヒメマス1、ニジマス1
ブラウントラウト1
群馬県 農産物 232 1 フキノトウ1
水産物 56 1 ヤマメ1
千葉県 農産物 312 13 タケノコ9、原木シイタケ4
水産物 183 1 ギンブナ1
岩手県 農産物 418 130 原木シイタケ118、コシアブラ4、コゴミ1、ワラビ2
ゼンマイ2、タケノコ1、タラノメ1、ミズ1
水産物 108 3 ウグイ2、イワナ1
その他 6 1 乾燥シイタケ1
山形県 野生
鳥獣肉
9 2 ツキノワグマ肉2
埼玉県 水産物 14 1 ナマズ1
神奈川県 農産物 55 1 原木シイタケ1
新潟県 野生
鳥獣肉
1 1 ツキノワグマ肉1

※基準値超過には新基準値超過及び暫定規準値超過(経過措置対象の場合)の件数を含む。なお、4月1日以降の新基準値超過例は、614件(総検査件数22,848件)。

※経過措置対象品目:米、牛肉、大豆

 この検査結果から、魚類や原木シイタケ、山菜(タケノコ、コシアブラ、タラノメ、コゴミ、フキノトウ、ゼンマイ、ワラビ、ミズ)は特に注意が必要と言えます。
 ちなみに当診療所が所在する新潟県では2012年4月から5月18日現在までの間、県内で流通する食品のサンプル検査で新基準値を超えるものはありませんでした。しかし、上記の厚労省が発表した表にも示されていますが、5月14日に魚沼市で捕獲され、捕獲者が県に持ち込んで検査されたツキノワグマから新基準値超過の放射性セシウム(134ベクレル/kg)が検出され、都内の飲食店ですでに客に提供されたという発表がありました。その他にも、基準値未満の放射性セシウムが検出された食品があり、以下に提示します。

食品群 検査日 品目 地域
・農産物:生産地
・水産物:水揚げ港所在地
・野生鳥獣:捕獲地域
放射性セシウム合計
(セシウム134
+セシウム137)
農産物 2012/04/03 菌床シイタケ 弥彦村 19
2012/04/27 原木シイタケ 阿賀町 16
2012/04/16 れんこん 茨城県 20
2012/04/19 うど 栃木県 6.2
2012/05/02 さつまいも 茨城県 5
2012/05/04 さつまいも 茨城県 17
2012/05/09 こごみ 南魚沼市 16
2012/05/09 こしあぶら 魚沼市 10
2012/05/15 菌床ナメコ 上越市 39.6
2012/05/16 菌床シイタケ 糸魚川市 21.3
水産物 2012/04/12 ブリ 千葉県(大原漁港) 可食部6
2012/04/23 フナ 新潟市(阿賀野川) 可食部11.4
2012/04/25 イワナ 魚沼市(奥只見湖) 内臓35、可食部56
2021/04/25 ヤマメ 魚沼市(奥只見湖) 内臓22、可食部38
2012/05/02 ウグイ 南魚沼市(魚野川) 内臓6.8、可食部46
2012/05/16 イワナ 阿賀町(阿賀野川) 内臓5.3、可食部16.1
野生
鳥獣
2012/04/19 ツキノワグマ 関川村 77
2012/04/19 ツキノワグマ 村上市 18
2012/05/01 ツキノワグマ 十日町市 58
2012/05/02 ツキノワグマ 関川村 37.2

※単位:ベクレル/kg

※上記食品の新基準値は100ベクレル/kg

 新潟県のホームページ『新潟県放射線・放射能データベース』では、福島第一原発事故以降に新潟県が測定し、公表してきた野菜、米、畜産、魚介類等の県内流通農産物、水道水、降下物や学校校庭等の空間線量率等の結果を検索し、閲覧することができます。参考にして頂きたいと思います。

 原発事故により放射性物質が拡散した結果、私達日本人の『食』がこれまでとは比べられないほど危険な状況に陥っています。「基準値以内だから安全、大丈夫」ではなくて、疑わしい、危険な食品は摂取せず、取り込んでしまった放射性物質は速やかに体外に排出させる必要があります。
 放射性セシウムについて、セシウム137とセシウム134が検出されていますが、前者の物理的半減期は約30年、後者は2.1年です(ちなみにストロンチウム90は約29年、プルトニウム239は2万4千年です)。放射性セシウムは水溶性で、飲食を介して体内に取り込まれると、ほぼ100%が胃腸から吸収され体全体に分布します。生体内での振る舞いはカリウムに似ていて、筋肉に蓄積しやすい特徴があります(これに対して、ストロンチウムはカルシウムに似ていて、骨に蓄積しやすい)。主に腎臓から尿中に排出され、生物学的半減期(体内から放射性物質の半分が排出される期間)は、セシウム137は70〜100日です。尿中排泄率より低いのですが、便からも排出されます。
 放射性セシウムの体外への排出を促す方法として、当院の治療指針にもありますが、①1日2〜3リットルの水(浄水したもの)を飲み、排尿を促す、 ②芽胞乳酸菌(ラクボン)を内服し腸内細菌のバランスを整え、便通を促す、ということが基本になります。
 今回は放射性物質に注意が必要な食品を提示しましたが、次回は、実際の健康被害(子供の突然死が10倍?等・・・)の報告を検索し、真偽を確かめて情報提供していきたいと思います。

(2012年5月22日 記:宮下)


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日本人の食と病いについて〜放射能編その2〜

 前回、当診療所に於ける放射能関連カラーの反応出現率を提示しましたが、4月が10%台だったのに比べて、5〜6月は30〜40%台(最高は5月下旬の45%)に増加しています。5月6日に茨城県で発生した竜巻や、6月中旬の台風4号の影響で放射性物質が拡散した可能性があります。また4〜5月は放射性物質で汚染されやすい山菜を摂取していた方が多く、それによる内部被曝の影響も考えられます。

 今回は放射性物質による健康被害についての報告をお知らせします。
 福島第一原発事故の発生から1年4ヶ月が経過しました。インターネット上には原発事故後に突然死や心不全、心筋梗塞、脳梗塞等が急増している、また様々な体調不良に関した情報があります。

関係団体の証言

子供の病死者・突然死者数の増加

心臓への影響

 上記3つの報告では震災によるストレスが主な原因であろうと推測されています。しかし、原発事故で拡散した放射性物質による循環器系への影響も否定できません。放射性セシウムは筋肉に蓄積しやすく、心臓も横紋筋という筋肉でできているためにセシウム137が蓄積して疾患を生じる危険性があるのです。
 その根拠として、ベラルーシのゴメリ医科大学の元学長ユーリ・I・バンダジェフスキー氏の論文(「放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響」久保田護 訳)があります。チェルノブイリ原発事故後に同大学病院で亡くなった患者を解剖し、各臓器に蓄積したセシウム137の量と臓器の病理学的変化を調べています。特筆すべき点は、突然死した患者の99%に心筋異常が存在し、高濃度のセシウム137が心筋に取り込まれていた、ということです。その他にも、高濃度汚染地域の子供達に心電図異常や高血圧が高頻度で認められ、セシウム137の体内蓄積量との相関関係が明らかになったと報告しています。
 先に提示した、福島県の心疾患による病死の増加や、東京都内で急増しているという乳幼児の突然死についても、放射性セシウムによる心筋異常が原因である可能性があります。

甲状腺への影響・福島県民健康管理調査

 チェルノブイリ原発事故後の放射性物質による健康被害として認知されているのは、事故後4年以降に急増し、6年後にピークとなった小児の甲状腺癌だけです。半減期が8日と短い放射性ヨウ素が原因とされ、セシウム137のような、半減期の長い物質による内部被曝は無視されてきました。
 福島県では震災後、福島県立医科大学の放射線医学県民健康管理センターが「県民健康管理調査」を実施しており、その内の一つに18歳以下の小児を対象とした超音波による甲状腺検査があります。2012年3月末日現在38,114人が受診し(受診率79.8%)、検査結果の概要が4月に報告されました。それによると甲状腺に5.0mm以下の結節や20.0㎜以下の嚢胞を認めたものが35.3%、5.1mm以上の結節や20.1mm以上の嚢胞を認めたものが0.5%(要2次検査)でした。
 この結果を受け福島県立医科大学は、「おおむね良性、通常の診療では想定内」としました。しかし大きさを限定しなければ結節が1.0%、嚢胞が35.0%に認められており、何らかの異常があるのです。
 教科書的には甲状腺の良性結節の有病率は1%で、好発年齢は30〜50歳、甲状腺癌の有病率は0.1%とあります(新臨床内科学第7版)。さらに甲状腺腫瘍に関しては、山下俊一氏(現福島県立医科大学副学長、放射線医学県民健康管理センター長)の以前の報告があります。

  1. 2000年に施行された長崎県の小児250人(7〜14歳)に対する甲状腺超音波検査で、甲状腺の腫大が4名(1.6%)、嚢胞が2名(0.8%)、5㎜以上の結節が0名(0 %)だった。
  2. チェルノブイリ原発事故後5〜10年後のチェルノブイリ周辺の小児(事故当時0〜10歳)甲状腺検診の報告によると、超音波検査に加え血液検査も行い、異常者にはさらに超音波の再検査と針生検による細胞診が行われた。ゴメリ地域での結節の検出率は1.74%で、細胞診の結果7%に甲状腺癌が発見された。これらの患者の半数以上に周辺リンパ節転移が認められ、中には肺などの遠隔転移も認められた。山下氏は「チェルノブイリの教訓を過去のものとすることなく、『転ばぬ先の杖』として守りの科学の重要性を普段から認識する必要がある」と報告を締めくくっている
    (2000年2月29日 原子力委員会 長期計画策定会議「チェルノブイリ原発事故後の健康問題」)

 これらと比較すると、今回の福島の子供の甲状腺の嚢胞35%というのは明らかに異常です。しかも生検による細胞診もせずに、おおむね良性と判断している点は作為的です。紙切れ一枚の検査結果が届き、甲状腺に結節や嚢胞があると記されていても小さければ次回の検査まで2年間は放置されるお子さんや親御さんの不安は計り知れません。
 しかも2012年1月16日山下氏は以前の自身の報告を無視するかのように「日本甲状腺学会 会員の皆様へ」という文書で、今回の福島県の甲状腺検査の結果、2次検査の対象外の子供の保護者からの問い合わせや相談には「次回の検査までの間に自覚症状等が出現しない限り、追加検査は必要がないことを十分に説明するように」と通達(つまり、余計な検査をするなという意味)しているのです。
 チェルノブイリの原発事故後甲状腺癌を発症し、手術を受けた子供達の首の傷跡は「チェルノブイリの首飾り」と呼ばれました。子供達にそんな首飾りをつけてはなりません

放射性物質から命を守るために

 原発事故で放射性物質が福島県を中心に東北南部から北関東に拡散してしまった事実は変えられません。時間経過と共に日本全土に拡散して行くことでしょう。しかし放射性物質による健康被害の不安や発病の可能性を小さくするための対策はあります。地下に浸透した分、表層的な除染は難しくなってきたために放射性物質で汚染されていない土地への避難(特に子供達)、子供の無料検診(甲状腺超音波検査以外にもホールボディカウンターでの体内放射線量の測定、血圧・心電図検査も行う)、汚染されていない土地での食糧生産、市民が気軽に食品の放射線量を測定できる体制の拡充が必要だと考えます。
 なお日本国内には現在ホールボディカウンターは100台以上あり、新潟県では2012年5月から新潟県放射線検査室(県立がんセンター新潟病院の隣)で有料(6,500円、減免制度もあり)で検査が受けられるようになりました。
 放射性物質による健康被害を防ぐために、今すぐ私達に出来ることは日々の飲食からの内部被曝を極力避け、減らすことです。放射性物質による健康被害は長期に渡る内部被曝については、たとえ被曝量が少なくとも時間を追うごとに顕著になってくるという学説があります。これ以上の被曝を避けるよう、是非ご自身や周りの方々が口にするものを「放射性物質が含まれていないか?」という観点で選んで頂きたいと思います。
 以上の経緯から、丸山所長は測定器を購入され患者様の食の安全に少しでも役立つならばと、7月から食品の放射線量の簡易測定を開始されました。その場で結果をお知らせし、また測定データを集計しホームページなどで公表させて頂く予定とのことです。

(2012年7月19日 記:宮下、補助:大澤、監修:丸山)


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日本人の食と病いについて〜放射能編その3〜

 前回、放射性物質による健康被害について報告しましたが、それらを裏付けるようなデータが出てきています。
 まず、福島の県民健康管理調査の甲状腺検査で癌の発症が確認されました。同検査は、2011年3月の福島第一原発事故発生当時18歳以下だった福島県の全ての小児30数万人を対象に実施されるもので、定期的に検討委員会が開かれ、2012年3月までに検査をした38,114名のうち2012年9月に1名、2013年2月13日に2名、合計3名の甲状腺癌が報告され、7名が甲状腺癌の疑いで検査中です。甲状腺癌と診断された3名は既に手術を受けたとのことです。これらの報告は2011年度の検査結果であり、2012年度に甲状腺の細胞診を受けた9名の結果は報告されていないので、甲状腺癌と診断される人数はもっと多くなる可能性があります。
 調査を担当している福島県立医科大学は、チェルノブイリの原発事故では甲状腺癌の発症が増加したのは4年後以降という理由で、3名の甲状腺癌発症と福島の原発事故による放射線被曝との関係を否定しています。2012年9月の検討委員会では事前に秘密の準備会があり、調査結果に対する見解をすり合わせ「癌発生と原発事故による因果関係はない」ことなどを共通認識とした上で、本会合のやりとりを事前に打ち合わせていたそうです。
 ちなみに、本年2月18日に新潟テルサで行われた武田邦彦氏の講演では、原発事故時18歳以下で検査を受けた約38,000人のうち、既に10名が甲状腺癌の手術を施行されたという内容が述べられました。事故前の発症確率と比較すると50倍になったという事実に対し、彼等は放射性物質以外の何を理由として挙げられるのでしょうか?
 京都大学原子炉実験所の小出裕章助教に問い合わせたところ、「政府は福島の原発事故の規模を広島原爆の168発分と発表したが、これは過少評価。チェルノブイリの事故は広島原爆の1千発分で、福島の原発事故で大気・海水・土壌に放出された放射線量はチェルノブイリとほぼ同レベルである。」との見解でした。当診療所の丸山所長は、福島の原発の爆発や今なお漏れ出ている放射性物質の量に対する日本政府の政策の不備、つまり避難の遅れと範囲の狭さ、除染の拙劣さ、ましてやガレキ処理の方法の間違い、および食品の安全基準の甘さ、そして何より流通規制の無さ・・・以上から、チェルノブイリと比較して、2年後以降から甲状腺癌が増加し、ピークは4年後であろうと予測されています。尚、セシウムの心筋への影響で突然死もこれから徐々に増加して行くであろうと話されています。
 そのセシウムの心臓への影響に関連して、茨城県の取手市で原発事故後、学校検診で心電図異常が増加しているという報告がありました。取手市は空間放射線量率が事故後10倍近くになった地域ですが、毎年小中学校の1年生を対象に行われる心電図検査で、精密検査が必要とされた児童生徒は、原発事故前の2010年度までは最高で1.79%でしたが、2011年度は2.38%、2012年度は5.26%になりました。また、精密検査の結果心臓に疾病・異常が認められた割合は、2010年度までは最高で0.71%でしたが、2011年度は1.28%、2012年度は1.45%でした。放射性セシウムによる心筋異常が関係している可能性があります。

 ここで、前々回に引き続き、当診療所に於ける放射能関連カラー反応出現率のグラフを提示します。
放射線カラー反応率
 昨年の5月が45%で最も高く、放射性物質に汚染されやすい山菜を摂取していた方が多かったためと思われます。秋以降は10〜30%で推移しています。カラーの反応部位が消化管についで鼻咽〜気管・肺に多く、心臓に反応するケースもあります。飲食を介した内部被曝のみならず、大気中の放射性物質を吸い込み呼吸器系にも影響していると思われます。
 放射性物質による大気汚染に関連して、2013年2月現在、岩手県と宮城県の震災がれき処理を実施している自治体は11都府県(青森県、秋田県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、東京都、石川県、静岡県、大阪府、福岡県)あり、放射性物質の拡散に影響している可能性があります。当診療所がある新潟県では、2013年2月12日に柏崎市と三条市で、2月18日には長岡市で岩手県大槌町のがれきの本格焼却が開始されました。富山県もがれきの受け入れを表明しています。放射性物質による影響の他に中国の大気汚染物質(PM2.5)が日本でも観測されており、今後呼吸器疾患の増加や悪化が危惧されます。
 2012年11月下旬に新潟市でがれきの試験焼却が予定されたこともあり、簡易式の放射線測定器を用いて当診療所の屋外の空間放射線量を毎日計測しています(結局市民の抗議行動で試験焼却は中止となり、新潟市ではがれき処理は行われないことになりました)。日によって、また朝晩によっても数値にバラツキがありますが、県の発表している数値より高い傾向にあります。
 上記のような放射性物質による健康被害を避け、少しでも減らすために、また患者様の食の安全に少しでも役立つならと、当診療所では2012年7月から食品の放射線量の簡易測定を開始しました。2013年2月22日現在、食品44ヶのデータが集まりましたので以下にまとめます。

当診療所における食品の放射線量測定結果

No.測定日食品産地等放射線量の判定
(1)(2)(3)(4)
12012/7/13 タケノコ 新潟県柏崎市
2乾燥シイタケ新潟県柏崎市
3 2012/7/24 乾燥ゼンマイ 新潟県東蒲原郡阿賀町
4味噌(有)ヤマサ
5新潟県五泉市(信濃川流域)
6新潟県長岡市
7水(上水道)新潟県長岡市
82012/7/27水(上水道)新潟県柏崎市
9水(わき水)新潟県柏崎市
10水(上水道)新潟県村上市
112012/8/7小松菜新潟県長岡市(信濃川河川敷西側)
12水(上水道)東京都杉並区
132012/8/20水(上水道)新潟県新潟市江南区
14新潟県五泉市(信濃川流域)
152012/9/4新潟県長岡市
162012/9/28新潟県村上市
172012/10/19東京都国立市
18新潟県新潟市西蒲区
19えのき新潟県北魚沼郡西川口
202012/10/22きのこ新潟県村上市
212012/10/31福島県耶麻郡西会津町
222012/11/1新潟県五泉市
23味噌新潟県五泉市
24湯通し塩蔵ワカメ宮城県三陸産
252012/11/8新潟県佐渡市
262012/11/29乾燥シイタケ新潟県東蒲原郡阿賀町
272012/11/30群馬県沼田市
28群馬県利根郡川場村
29新潟県新潟市秋葉区
302012/12/3新潟県新潟市北区
312012/12/12じゃがいも北海道産
322013/1/1新潟県阿賀野市
33大根新潟県阿賀野市
34人参新潟県阿賀野市
35じゃがいも新潟県阿賀野市
36白菜新潟県阿賀野市
37キャベツ新潟県阿賀野市
38ワラビ新潟県東蒲原郡津川
39コゴミ新潟県東蒲原郡津川
40なめこ新潟県十日町市
41なめこ新潟県東蒲原郡津川
422013/1/4海苔千葉県木更津産
432013/1/18新潟県岩船産
442013/2/4干し芋茨城県産

 ただし風評被害を起こさないよう注意して頂きたいのは、上記の表で(3)や(4)と判定されたからと言って、その地域全体の食品から放射性物質が検出される訳ではなく、時期や場所、食品によって違うと言うことです。ちなみに新潟県の検査では、これまで県内産の米、野菜及び水道水からは放射性セシウムは検出されていません(ただし検出限界値があり、不検出と言っても数値がゼロではありません)。
 診療所の待ち合いに『食品の放射線量測定のご案内』を掲示していますので、まだの方はご覧になって下さい。特に日々摂取する物や、お子さんがいらっしゃる場合は、実際に食品の放射線量を測定して安全かどうか確認して下さい。そのために是非診療所の測定器を活用して頂きたいのですが、各家庭で測定器を用意して、逐一食品の放射線量を確認することができれば最良です。小型ハンディタイプの食品の放射線量測定器としては、当診療所で使用しているAION−A7(アイオンセブン)が、国の基準と同じベクレル(Bq)表示が可能な点や、測定方法が簡便な点から最もお勧めできます。この機種の最新のものは表示がBq/cm2からBq/gに変更され、判定しやすくなりました。
 今後も食品の放射線量と共に空間放射線量の推移も調査し、患者様の健康を守るために、診療の参考にしていきたいと思います。いずれまたこのコーナーで、データを報告させて頂きます。

(2013年2月22日 記:宮下、監修:丸山)


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